ミュージカル「スタミュ」スピンオフteam柊単独レビュー公演『Caribbean Groove』感想・レポ・レビュー

感想・レビュー

team柊 単独レビュー公演『Caribbean Groove』

時は海賊黄金時代。

カリブ海にたなびく、真紅の海賊旗。
そのシンボルマークに因み、彼らの通り名は“ブラッディ・ロジャー”。
5人のリーダーが率いる、血染めの海賊。
そんな彼らには、誰にも知られていない秘密があった。

アニメ「スタミュ」HPより引用 http://hstar-mu.com/special/caribbean_groove/index.html



「スタミュ」とは

2018年4月27日、28日。
 舞浜アンフィシアターにて、ミュージカル「スタミュ」スピンオフ team柊 単独レビュー公演「Caribbean Groove」全4公演が行われました。

「スタミュ」とは、2015年10月に第1期が放映されたアニメ作品です。音楽芸能の名門校である綾薙学園を舞台に、学園の花形・ミュージカル学科への入科を目指す1年生たちの物語です。
主役は落ちこぼれの“スターダスト”team鳳(チームおおとり)。今回公演を行ったteam柊(チームひいらぎ)はライバルチームであり、優秀な生徒を集めた“スター・オブ・スター”です。彼らは「スタミュ」の世界で著名なミュージカルである「Caribbean Groove
を演じ、テストステージをトップ通過してミュージカル学科に入科しています。(team鳳も通過5チーム中5位ではあるものの、入科を認められています。)

そんな劇中劇が、独立したステージになる! 発表された瞬間から楽しみでした。
なぜなら、ミュージカル「スタミュ」(※アニメ「スタミュ」1期を舞台化したもの。2017年4月上演。以下、スタミュミュ1)にてteam柊を演じたキャスト5人がそのまま出演し、なによりスタミュミュ1の中ではほとんどカットされてしまっていた「Caribbean Groove」が全部観られるからです。(あくまでteam鳳が主役なので、team柊に時間を割けずにカットされてしまったんだと思います。)
結果、期待通りの満足度であり、期待を上回る完成度でした。

登場人物の『三重構造』が舞台の奥行きを生んでいた

先ほども少し触れたとおり、「Caribbean Groove」は劇中劇です。なので、「『Caribbean Groove』の登場人物」は「『スタミュ』に登場するteam柊のメンバー」が演じていることが根底にあります。
演じているメンバーと登場人物はそれぞれ別のキャラクターではあるものの、リンクしている部分も多くありました。随所にteam柊のメンバーの個性を感じることができる演出は、スタミュファンとしてとてもうれしかったです。
各メンバーの紹介とともに、どういった部分がリンクしていたかご説明させていただきます。名前がたくさん出てきますが、ふりがなの振ってある漢字の名前がteam柊のメンバー、カタカナ名が「Caribbean Groove」の中でそのキャラクターが演じた役名です。最後はキャスト名です。

1.クリス(辰己琉唯)とアルベール(申渡栄吾)

キャプテン不在の海賊団“ブラッディ・ロジャー”の自称船長クリスを演じた辰己琉唯(たつみ るい)は綾薙学園1年生の中での正真正銘トップスターであり、team柊のリーダーです。穏やかで優しい人物ですが、確固たるリーダー論とミュージカル論を持っており、スタミュという物語を方向づけている重要なキャラクターです。櫻井圭登さんが演じています。

海賊船の航海士・アルベールを演じる申渡栄吾(さわたり えいご)はteam柊の参謀的ポジションです。分析が得意で優秀ですが、幼馴染にして親友の辰己のこととなると冷静さを欠くことも。演じているのは北川尚弥さんです。

このふたりの見どころは何と言っても「The Elegance
。ふたりのデュエット曲です。クリスとアルベールそして辰己と申渡はともに幼なじみで唯一無二の関係。その関係を二重にあらわすこの曲、サビでお互いに向かって手を伸ばしながら歌い上げます。もう観客なんて全然見ていない! 完璧に「ふたりの世界」を作り上げていました。
ちなみにファンの間ではこのふたり、曲のタイトルを取って「エレガンス組」と呼ばれています。このふたりが絡むと毎回黄色い歓声が上がります。

2.ジョバンニ(戌峰誠士郎)とアンリ(卯川晶)

港町で出会いふらりと仲間に加わった青年・ジョバンニを演じるのは戌峰誠士郎(いぬみね せいしろう)。彼は端的に言って「天才」であり、リーダーの辰己も認めるミュージカルの申し子です。元気で大きなダンス、突き抜けて明るい歌、天然を通り越して動物的な動き。彼がステージに現れると観客みんなが笑顔になる、そんな存在です。丹澤誠二さんが演じています。

また、クリス(辰己)のいとこ・アンリを演じるのは卯川晶(うがわ あきら)です。女の子のようなかわいらしい外見をしていますが、最も気が強く男前です。演じているのは星元裕月さんです。ちなみに彼は一度客降りの際に私の席の横を通ったことがあるのですが、ふわっといい香りがして思わずドキッとしました。正真正銘の男の子ですが、女子10人中9人は「負けた……!」と思うほどの女子力の持ち主です。私も完敗です。
このふたりが歌う「キラメキラキラ☆」は騒がしくて愉快な曲です。ふたりはこの曲でステージから降り、客席中を走りまわって観客を喜ばせてくれました。

3.ティエラ(虎石和泉)

最後に、生粋の海賊・ティエラを演じるのは虎石和泉(とらいし いずみ)です。高野洸さんが演じています。
彼に対してはとにかく歓声(というよりむしろ悲鳴)が凄い!
チャラチャラしていて女の子が好きという設定はティエラと虎石で共通しており、公演中も観客を「子猫ちゃん」と呼んだり投げキスをしたりと、観客が呼吸困難に陥るほどのファンサービスを繰り広げます。(ちなみに彼のファンは非公式で「虎石の女」と呼ばれています。)
彼のソロ曲「Honey! Honey! Trap!」は今回の公演で最も盛り上がった曲でした。
どんな曲か簡単に言うと「母親以外のすべての女がストライクゾーン」と公言する彼が女全員に向かって「両思いだぜ」と宣言するチャラ男の極みソングなのですが、サビの直前で一瞬音が止まった瞬間に入る「好きだよ」というセリフが凄い。
彼はとにかく焦らします。
セリフが入ることは観客も分かっているので今か今かと待ち構えているのですが、なかなか言いません。ある公演では面白がるように軽く笑ったり、また他の公演ではキメ顔で客席を見渡したりします。その間会場は静寂に包まれます。静かすぎて、少し離れた席の女性のまばたきの音すら聞こえてきそうなほどです。そしてふいに放たれる「好きだよ」。
その瞬間に客席のあちこちから悲鳴が上がります。ジェットコースターが落ちるときの絶叫と、失神する寸前に漏れる力の抜けた声が混ざったような感じでした。ちなみにネット配信された映像に悲鳴とともに崩れ落ちる「虎石の女」が多々映っていますので、円盤化した際はぜひチェックしてみてください。客席まで含めてエンターテイメントでした。


海賊団“ブラッディ・ロジャー”から“スター・オブ・スター”team柊に戻る瞬間

 クリスが強国に侵略された小国の王子であることを知った海賊団は、全員で強国を倒すために立ち上がります。そして戦闘の末に小国の平和を取り戻し、国民に感謝されながらまた海賊旗を掲げてカリブ海に旅立っていきます。

そんなストーリーの中にチーム曲、デュエット曲、ソロ曲がふんだんに詰め込まれていました。
そして「Caribbean Groove
の演目がすべて終わり、舞台上のスクリーンに「fin.」の文字が出て大きな拍手をしていたとき、真っ暗な会場に突然穏やかな声が響きました。

「今日のステージはいかがでしたでしょうか?」

通路の一角にスポットライトが当たった瞬間、観客全員が息を呑みました。
 そこに、綾薙学園の制服を着た柊先輩(畠山遼さん)が立っていました。柊先輩の出演はシークレットだったので、客席は騒然として悲鳴も上がりました。
 柊先輩とは、team柊の5人を選抜して指導した3年生の先輩です。5人をミュージカル学科合格に導いた、学園のトップスターです。
 柊先輩は5人が捌けたあとのステージにゆっくりと上がり、観客に語り掛けました。5人がこの演目を完成させるまでにどれだけ努力してきたか。どれだけ“スター・オブ・スター”であるプレッシャーと戦ったか。
柊先輩の言葉は優しく慈愛に満ちていて、「彼らが誇らしいです」と言ったとき、自分が綾薙歌劇場の客席に座っているような錯覚に陥りました。そして、このステージは「Caribbean Groove」という演目であると同時に、team柊の物語を描こうとしていたことに気づかされました。
スタミュミュ1ではほとんどカットされてしまいましたが、team柊は1500人収容の大劇場である綾薙歌劇場を埋めて公演を成功させています。そしてそこに至るまでにはあらゆる苦悩があった。そんな、スタミュミュ1では語られることはなかった(けれど確実に存在している)team柊の物語を感じさせてくれました。
私はテストステージを終えた5人に客席から拍手を送っているような気持ちになりました。

そのまま柊先輩は立ち去り、入れ替わるようにteam柊の5人が再登場します。さっきまで演じていた役柄ではなく、今度はteam柊として、チーム曲である『カメレオン・スター!』と『スター・オブ・スター!』を続けて披露しました。2曲とも自分たちがトップであるという自覚と覚悟を歌っています。柊先輩の言葉を聞いた直後だからこそ、その覚悟がステージに映えていました。


演じていたふたつのキャラクターを順番に脱ぎ、最後に自分自身をさらけ出してくれたキャスト

アンコールに歌われた「Welcome,Thank you
とそれに続くカーテンコールは「Caribbean Groove」の登場人物でもなくteam柊でもなく、キャストの素の姿が垣間見えました。
二重に演じていたキャラクターを順番に脱いだ彼らが最後に見せてくれたのは、生身の役者としてこのステージに賭けている「本気の姿」でした。特に卯川役の星元さんが「壁を感じたり、壁を作ったりしたこともあったけれど、それでもteam柊のみんなが大好き」とコメントしていたことが印象的でした。彼らキャストが努力を重ねてこのステージを作り上げたということが言葉の端々から伝わってきました。そして、キャスト5人の努力がteam柊の積み上げてきた努力と重なって、キャストとteam柊、それぞれの過ごしてきた時間がいっそうリアリティを持って観客に届きました。
「Caribbean Groove
と「スタミュ」、ふたつのキャラクター同士がリンクし、さらにキャスト自身とも重なる。この三重構造が舞台の奥行きを生んでいるのだと感じました。

「Caribbean Groove」という世界観、team柊というキャラクター、そしてキャストへの興味。どこから入ってもその上下に重なっている広大な物語があります。少しでも引っかかるものがあれば、ぜひ観劇してその奥深さを体感してみてください。

ペンネーム:はまち
好きな舞台のジャンル:2.5次元

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