Musical Code:Realize(コード・リアライズ) ~創世の姫君~感想・レポ・レビュー

感想・レビュー

Musical Code:Realize(コード・リアライズ) ~創世の姫君~とは

「Musical Code:Realize(コード・リアライズ) ~創世の姫君~」(以下、コドミュ)はオトメイト原作の同名人気ゲームを舞台化したものです。

 舞台は【機鋼都市ロンドン】と呼ばれる架空の街。
全身に猛毒を宿す少女・カルディア(演:長谷川愛)と泥棒紳士と名乗るアルセーヌ・ルパン(演:良知真次)、そしてその仲間たちが「コード:リアライズ」と呼ばれるテロ計画に立ち向かう物語です。
乙女ゲーム原作らしいヒロインのかわいらしさ、男性キャラのかっこよさ、そして恋愛要素が舞台ならではの演出でたっぷりと盛り込まれたミュージカルでした。


 

物語の重要な設定【機鋼都市ロンドン】とは

私がコドミュを観劇するにあたって気になっていたのは、物語の舞台である【機鋼都市ロンドン】をどう表現するのかでした。
 

【機鋼都市ロンドン】

二重の巨大な壁と壁上にある砲塔の群で守られた要塞都市。
外側はアウターロンドンと呼ばれ、蒸気エネルギー生成を一手に担う工場などが立ち並ぶ中層街や下層街。
また森林部には貴族の別荘が軒を連ねている。
壁より内側には都市の中心部となるセントラルロンドンがある。
英国の政治機関が集中しており、ここがイギリスの心臓と言っても過言ではない。
 
アニメ版「Code:Realize」公式HPから引用
(http://coderealize-anime.com/introduction/)
 
 名称にロンドンと付いていますが、街並みをモチーフにしている程度で、架空の都市と言っても過言ではありません。この街には至るところに歯車が設置されています。建物に取り付けてある大きな歯車、街灯に据え付けてある小さな歯車。近世ヨーロッパの街が機械で動かされているような都市です。
 それを舞台上でどう見せてくれるのか。その期待を胸に、劇場へと向かいました。
 
結果、ほとんど何も表現していなかった!
 
機鋼都市を表現していたのは舞台の後方に掲げられた大きな歯車の絵くらいでした。具体的な景色の描写はなく、観客はほとんど登場人物の言動のみで【機鋼都市ロンドン】について知ることになります。
これは不満か? と問われれば答えは「否」です。
むしろ、だからこそ期待を上回る観劇体験ができたという感動でいっぱいです。


極限まで情報量を落としたシンプルな舞台

本作の演出を担当したのは、ミュージカル「ヘタリア」やミュージカル「男水!」などの演出も手掛けている吉谷光太郎さんです。吉谷さんのミュージカルの特徴は「人力」。映像や大がかりな装置を使った派手な演出はほとんどありません。ミュージカルにとって最も大切な、舞台セットと役者。そのふたつの要素で出来ることを魅力的に表現してくれるのが吉谷さん演出の特徴です。
そんな吉谷さんの持ち味でありコドミュの見どころにもなっていたのは、キャスト自らが舞台セットを動かし場面転換を表現すること。ほとんどはアンサンブルキャストが移動させますが、時にルパンなどの主演級キャストまでもがセットを押して動かします。足で固定用のストッパーをきっちり掛けてからそのセットに飛び乗り、歌ったり踊ったりする。ちょっとシュールにも思えますが、ナチュラルな動きで場面に溶け込んでいたので気になることはありませんでした。むしろ舞台上に最初から存在しているもの(キャストとセット)以外が観客の視界に入ることがないので、そのぶんキャストの歌やダンス、演技の魅力を存分に味わうことのできるミュージカルに仕上がっていました。

魅力的なミュージカル俳優たち

 
 シンプルな舞台上で最も存在感があったのはアルセーヌ・ルパン役の良知真次さんでした。ターンひとつで目を引き、ワンコーラス歌うだけで耳に残るくらい華のある彼は、コドミュという作品の雰囲気そのものを作り上げていました。
 また、ヒロイン・カルディア役の長谷川愛さんは美しく、女子が好きな「可憐な女の子」そのものでした。特に印象的なのはルパンを思って泣きながら歌うシーン。声は震えながらも透き通ったままで、心地いいのに切なくなりました。
なにより見ているだけで楽しかったのは、再現度の高い衣装です。カルディアの衣装は白とブラウンが基調のドレス。登場人物の中で最も色味が少ないですが、豪華なレースやふんだんに使われている金糸が荘厳さと女性らしさを際立たせ、華やかな舞台の中心に自然と溶け込んでいました。
そして、最も印象深かったのはフィーニスでした。
 フィーニスはカルディアの弟にしてテロ計画「コード・リアライズ」実行のために暗躍する人物。悪役の立ち位置ですが、自分が父親に愛されなかったことに深い傷を負っているという背景もあります。そんなフィーニスが物語の終盤、思いの丈をすべて吐き出して舞台のセットから落ちて消えていくシーンは圧巻でした。「コード・リアライズ」計画をルパン一味によって阻止され、失意の中で狂ったように叫ぶフィーニス、本気で怖い。道端でナイフを振り回している暴漢に遭遇してしまったようなリアルな恐怖を感じました。しかし、フィーニスに感じるのはそれだけではありませんでした。叫び散らす言葉の端々が震え、苦悶で表情が歪んでいく姿に「切なさ」が浮かび上がってきます。「愛されたかった」と吐露しながら消えていくフィーニス、ちょっと怖いけど嫌いにはなれませんでした。
 フィーニスを演じたのは20歳の若手・星元裕月さん。終盤では主役のルパン一味を凌ぐインパクトがあり、将来が楽しみになりました。そんなキャストの力量を存分に楽しめたという意味でも、シンプルな演出は効果的だったと思います。

映像を使った場面転換や大がかりなセットを使った派手な演出をすれば【機鋼都市ロンドン】を再現することは可能だったかもしれません。しかし、キャストの魅力が最も映えるよう計算された舞台で登場人物の心情を丁寧に追うことができ、観劇している間に何度も彼らの生きる街が目の前に浮かんできました。
表現しないことで見える景色もある。そんなことを感じたミュージカルでした。

公演データ

スケジュール
東京公演 2018年5月17日(木)~20日(日) シアター1010
大阪公演 2018年5月26日(土)~27日(日) 森ノ宮ピロティホール

キャスト
アルセーヌ・ルパン        良知 真次
カルディア            長谷川 愛
エイブラハム・ヴァン・ヘルシング 秋沢 健太朗
ヴィクター・フランケンシュタイン 仲田 博喜
インピー・バービケーン      鷲尾 修斗
サン・ジェルマン         滝澤 諒
フィーニス            星元 裕月
エルロック・ショルメ       君沢 ユウキ
ランパール・レオンハルト     大力

アンサンブル
仲田 祥司
澤邊 寧央
山口 渓
多田 滉
下村 綾
熊田 愛里
藤縄 雄大
熊田 健大朗

ペンネーム:はまち
好きな舞台のジャンル:2.5次元

コメント

タイトルとURLをコピーしました