『酒と涙とジキルとハイド』Jekyll & Hyde & So onの感想・レポ・レビュー

感想・レビュー

「酒と涙とジキルとハイド」Jekyll & Hyde & So on

【ジキルとハイドで泣き笑い!?】

19世紀のロンドン。ここ、ジキル博士の研究室には壁一面に本や薬物が並び、助手のプールは整理整頓に大忙し。
博士は永年、人間の持つ二面性について研究を重ね、とうとう人格を「善」と「悪」とに分ける画期的な新薬を開発します。
けれど大事な学会発表が翌日に迫るなか、実はただの一度も実験に成功していないのでした。焦り悶える博士の元へ、ランチを差し入れに婚約者のイヴが訪れます。
清楚で美しいイヴは博士の理想の女性ですが、固くよそよそしい態度に博士はやきもきさせられっぱなし。しかし、イヴが忘れていった本を見つけたプールと博士は、イヴの思わぬ一面を知ってしまいます。
一方、成功しない実験に業を煮やした博士は、禁断の替え玉作戦に踏み切ります。売れない三文役者のビクターを言葉巧みに引き込み、博士が薬を飲んで「悪」の人格が出現した“ハイド氏”のふりをしてもらおうというのです。
あれこれ演技指導しながら入念にリハーサル。しかし、その最中に忘れ物に気付いたイヴが戻り、ビクターと鉢合わせしてしまいます。
プールが機転をきかせ、敵をだますには身内からとばかりに、薬の成果で“ハイド氏”になった博士の姿だと紹介。
ところが、生まれてはじめて粗暴で野卑な振る舞いをされたイヴはショックのあまりに開眼し、「私も自らの殻を破ってみたい」と言い出します。必死で止めるプールを尻目に、効かないはずの薬を飲んでしまったイヴは…。



『酒と涙とジキルとハイド』Jekyll & Hyde & So on観劇レビュー

三谷幸喜と言えば、2016年のNHK大河ドラマ「真田丸」の人気で、今や国民的知名度を誇る人気作家として注目される一人です。
その多彩な活動の原点は舞台で、1980年代の日本大学藝術学部在学中に劇団「東京サンシャインボーイズ」を旗揚げし、団長・脚本・役者まで全てをこなすマルチな活躍ぶりで頭角を表します。
1989年フジテレビ「やっぱり猫が好き」でテレビドラマの脚本、構成作家としても注目され、舞台活動と並行して、テレビドラマ脚本家として「古畑任三郎」「王様のレストラン」「新撰組!」などのヒット作を世に送り出します。
また、映画監督としても「ラヂオの時間」(1997)「みんなのいえ」(2001)「THE有頂天ホテル」(2006)から「ギャラクシー街道」(2015)までこれまでに7作品を手がけています。
日本では数少ない、ウェルメイドなコメディを基調とする作風で、歴史・洋画マニアな傾向を生かした上質な娯楽作品を数多く発表しているなかでも、2014年の「酒と涙とジキルとハイド」は、2018年に同じキャストとスタッフが結集し再演されました。
原作はもちろん、ホラー小説の古典として名高い、ロバート・ルイス・スティーブンソンの「ジキル博士とハイド氏」。
善人のジキル博士が悪の怪人ハイド氏に変身するストーリーを換骨奪胎、三谷幸喜ならではの鋭いパロディによるパンチが効いた、大人のコメディになっています。
ヒロイン・イヴ役の優香は、2014年に本作品で舞台デビュー。グラビアアイドル、マルチタレントとしての活動で垣間見せる演技力とコメディエンヌの才能を、三谷幸喜が見出して本格的な舞台作品に抜擢したことが話題となりました。
冒頭のモノローグでは、自然な台詞まわしで確かな演技力を示し、劇場の空気を一瞬で期待感に満ちたものにしてしまいます。
そして見せ場となる中盤以降は、まさに縦横に舞台を駆け巡り、コメディエンヌとしての生き生きとした躍動感を十分に発揮。
今後も優香のコメディを見たいと思わされること必至です。ジキル博士役の片岡愛之助は、主演ながら受けの役どころ。
堂々とした佇まいで真面目にやればやるほど面白いというはまり役です。ロバート役の藤井隆は、出演者のなかでも喜劇に最も馴染みがあるはずですが、演じる・成りすますことへの抵抗感をぬぐい去れず、しぶしぶ演じている役者という複雑で意外と奥が深い人物を演じています。
そして、まさに「真田丸」に出演したことで人気が上昇した迫田孝也演ずる助手のプールは、一見、冷静で信頼できそうでできない狂言回しの役割。奇抜なコスチュームも含め、憎めないキャラクターです。

三谷幸喜の最近の舞台作品での傾向として、音楽へのこだわりがあります。本公演では、高良久美子と青木タイセイによる生演奏。それも打楽器、ピアノ、管楽器まで、数種類に及ぶ楽器を使い、役者の動きや情景に合わせた効果音をも演奏してしまうのです。
アニメーションなどではおなじみの動作やシーンに音がつくということは、生の舞台となると想像以上に高度な技術を要します。
カーテンコールで演奏者が二人と知って驚かない人はいないでしょう。細部まで贅沢な、あっという間の1時間45分です。

公演データ

2018年4月27日~5月26日
東京芸術劇場 プレイハウス
作・演出:三谷幸喜
美術:松井るみ
照明:服部基
音楽:高良久美子 青木タイセイ
音響:井上正弘
衣裳:前田文子

ジキル博士:片岡愛之助
イヴ:優香
ビクター:藤井隆
プール:迫田孝也

ペンネーム:Ganz Pause
好きな舞台のジャンル:演劇、寄席、ジャズ&ロック
タイムマシンで観に行きたいもの:1900年のパリ万博

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