クジラの子らは砂上に歌う感想・レポ・レビュー

感想・レビュー

クジラの子らは砂上に歌う

『ミステリーボニータ』にて連載中の『クジラの子らは砂上に歌う』の舞台化、再演です。『クジラの子らは砂上に歌う』、略して『クジ砂』は、2016年の初演との間にアニメ化もされた人気作品。舞台となる砂に覆われた謎多き世界で、少年少女たちの戦いを描いています。


クジラの子らは砂上に歌う感想・レポ・レビュー

 大阪公演を昼夜観劇いたしました。今回は再演という形です。初演からキャストは一部変更となりました。チケットの入手難易度が上がる変更だったと思います。

 内容は、一言で表すなら『忙しい人のためのクジ砂ダイジェスト』でした。時間的にどうしても急ぎ足なのは仕方がありません。ただどうにも分かりにくい部分が出てので、そのあたりは原作で補完が必要と思われます。予備知識なしで舞台を見ると、よく分からないうちに終わってしまいそうなのがもったいない部分もあったように思います。
 小説・マンガ・アニメ・舞台という媒体にはそれぞれにふさわしい演出方法があります。原作通りに話を進めるのが必ずしもいいとは限りません。大事な要素を抽出して媒体にあう再構成をするのが、2.5次元を含めた舞台の脚本・演出の腕の見せどころです。うまく改変されてまとまっていた時の感動は、原作あり舞台の醍醐味のひとつではないでしょうか。
 そういった意味で、今回のクジ砂は全体的によくまとまっていました。舞台を見てから原作を楽しむ、という流れもありです。

 ファンタジー要素のある原作は、舞台上でそれを再現する演出をしなければなりません。今回、クジ砂ではサイミアと呼ばれる超能力を人で表現していました。演じる女性たちの不思議なリズムから、その能力の持ち主の感情が伝わってくるようで興味深かったです。この女性たちの、人ではないような雰囲気がつむぐ空気感は独特でした。これが今回の舞台にはとても合っていたと思います。
 泥クジラと呼ばれる漂泊船も、舞台に存在するわけではないのですが、なんだか大きそうなものがそこにある感じは伝わってきます。ただ、大阪公演だけかもしれませんが、照明が明るめでキラキラしている時も多く、砂感は抑えめでした。もっと砂っぽくてもよかったかも?
 武器の再現率は高いです。そしてきっと軽いのでしょう。殺陣が速かったです。持ちづらそうなところはひやひやしました。大きな事故がなくてよかったです。
 歌を含めた音楽は世界観を高めてくれました。特にオープニングの曲は、ぐっと砂の海に引き込んでくれてよかったです。

 個人的に初めて拝見するキャストも多かったのですが、その中でも特に好印象だったのがリコス役の前島さんです。抑えた演技の中でも、静かに変化していく感情表現がきちんと伝わってきます。丁寧な役作りが見えました。
 動きもとても美しく、強そうで華がある。これからが楽しみな女優さんです。別の作品もぜひ見たいと思いました。もっと笑顔が見てみたいです。

 続投キャストでは、スオウ役の崎山さんの運動神経がいまひとつな演技がとてもよかったです。でもやっぱり強そうに見えました。
 原作のようなはかなさはないですが、舞台のスオウはこれでいいのでしょう。人の上に立つことを受けいれている強さが芯にあって、話の流れに説得力を持たせてくれました。

 チャクロ役の赤澤さんは本当に少年のようでした。記録係のため、傍観者になったりもする主人公ですが、すごく物語を動かしているのだと分かります。そしてきっと、すごい力を秘めている。未完成な少年っぽさが素晴らしかったです。

 個人的に一番心惹かれたのが、リョダリ役の伊崎さんでした。一見、狂気を帯びた言動を繰り返す役です。でも実は彼には彼なりのルールがありそうで、その底知れぬ狂気と無邪気な残酷さのバランスが最高にリョダリでした。原作から抜け出してきたかのよう。もっと見たかった!

 全体として主要女性キャストがそれぞれ個性のある演技でどれも素敵に感じました。原作次第ですが、舞台も次があるのでしょうか。期待したいと思います。

 クジ砂は、けっして幸せな話ではありません。みんなが必死で生き、戦う世界では、とても死が身近です。その平和ではない、でもきっと希望はある世界の空気が伝わってくる舞台になっていました。
 既に再演を収めたBD/DVDも発売されています。ぜひ一気に見て、クジ砂のざらりとした世界に浸ってみてください。余計なことを考えず、どっぷりとその世界観に入りこむことをおすすめします。


公演データ

【公演期間】
東京  2018年1月25日(木)~2018年1月28日(日)
大阪  2018年2月3日(土)〜2018年2月4日(日)

【劇場】
東京 AiiA 2.5 Theater Tokyo
大阪 サンケイホールブリーゼ

【キャスト】
チャクロ:赤澤燈
リコス:前島亜美
オウニ:財木琢磨
オルカ:伊万里有
団長:有澤樟太郎
リョダリ:伊崎龍次郎
サミ:高橋果鈴
ネリ / エマ:大野未来
スオウ:崎山つばさ

マソオ:村田洋二郎
ハクジ:加藤靖久 他

ペンネーム:柑橘
好きな舞台のジャンル:ミュージカル・2.5次元から小劇団・古典芸能まで
ひとこと:舞台大好きです。最近は2.5次元によく足を運びます。みんなを応援する気持ちで観劇しています。

コメント

タイトルとURLをコピーしました