演劇を10倍楽しむ方法!『劇場』という空間をたのしもう!!!

演劇を10倍楽しむ方法

【4】劇場という空間をたのしむ

さて、今回は、さまざまな劇場の魅力を、わたくし目線でお伝えしたいと存じます。どの劇場もそれぞれに、街や歴史との関わりを秘めてたたずんでおります。劇場へお運びになる際には、そんな断片を思い出していただけると、観劇もより一層たのしめるのではないでしょうか。


ロビーがすでに芸術品!帝国劇場(東京都千代田区)

演劇の歴史をひもとくと、日本で最初の西洋式劇場として1911年に登場いたしますのが、皇居前にたたずむ旧・帝国劇場。
以来この場所で100年以上にわたって演劇・ミュージカルの殿堂として時代を牽引し、現在の帝劇の姿となったのは1966年からでございます。

黒御影石の柱が美しいモダニズムを象徴するビルに、大劇場がすっぽり覆われている、とご想像下さい。
なにしろ、1F~地下6Fまで奈落が仕込まれ、1F~7Fまで1,897席の客席という恐るべき規模の空間構造…設計者の谷口吉郎すごい!と、すでに興奮しておりますが、ご案内するのはここからなのです。
1Fの劇場ロビーに一歩足を踏み入れますと、紫色の絨毯が敷き詰められた優雅な空間が広がります。じつはこのロビーには、帝劇の歴史にふさわしい貴重な美術品の数々が点在しているのでございます。
色鮮やかなステンドグラスと、金色の巨大な水引をかたどるオブジェは、猪熊弦一郎の作品。皇居側の壁面は、陶芸家・加藤唐九郎による志野焼きの陶壁で、彫刻家の本郷新が手がけた、喜怒哀楽、4つのお面が掲げられています。
…観劇前にすでに心洗われてしまう、品格をたたえた美術品はまだまだございますが、ちょっとこちらをご紹介いたしましょう。



朝倉文夫の作による小林一三像…“清く正しく美しく”と御遺訓された偉大な創立者でございますね…のそばに、1911年当時の帝劇の屋上部分に飾られていたレリーフがございます。
能面の翁と扇を重ねた紋章で、いわば帝劇の守り神と申せましょう。じつはこちらのレプリカが、有楽町方面のビル路面にございまして、触れると御利益があるのだとか…。観劇の前後に、ぜひ探してご覧になってみて下さい。


帝国劇場へのアクセスはこちら

池袋は文化の街 東京芸術劇場(東京都豊島区)

池袋は、国内最大規模の東武百貨店と西武百貨店の本店、ビックカメラやアニメイトの本店を擁し、東西にそれぞれ広がる繁華街で賑わう、東京三大副都心の一つでございます。
そんな消費文化を象徴する池袋のもう一つの顔は、芸術文化の街でございます。その発端はどのようなものだったのか、昔を訪ねにまいりましょう…。

大正末期から昭和初期にかけて、貧しいながらも夢と情熱にあふれる若き前衛画家や彫刻家たちが、豊島区西部に形成された、アトリエを備えた貸しアパート村に集っておりました。
最盛期には数百人を超える定住者と、俳優や作家たちは日夜、交流を繰り広げ、その様子を詩人で画家の小熊秀雄が「池袋モンパルナス」と、芸術の都・パリは下町の芸術地区に例えて呼んだのでございます。
戦争によって無情にも散逸したその文化は、しかしながら、若い人々が自由に切磋琢磨しながら創作に打ち込む、土地の記憶となったのでございましょう。
戦後しばらくすると、その地の「トキワ荘」というアパートに手塚治虫ら若き漫画家たちが住み込み…、日本を代表する漫画の聖地となったことは周知でございますね。

また一方で、1948年に日本で唯一の舞台芸術の専門学校、舞台芸術学院が創立され、多くの著名な演劇・ミュージカル俳優を輩出するようになります。時代と共に小劇場が競うようにひしめきあい、演劇文化が根付いた背景には、やはり人々の創造への熱気があったことでしょう。



そんな舞台芸術の公的な地域拠点として、ついに1990年、東京芸術劇場がオープン…、やっと本題でございます。ガラス張りのエントランスの内側は、巨大な吹き抜け空間。2012年の改装前にエスカレーターで登る際、高所恐怖症ぎみの方には難所と言えたかもしれません。
本格的なオペラやバレエ、コンサートを公演する大ホールのみならず、834席のプレイハウス、195~324席のシアターイースト、ウエストという多彩な三つの劇場をそなえ、2009年からは野田秀樹を初代芸術監督に迎えております。
池袋という街に文化の存在感を伝える東京芸術劇場は、ゆっくりと成熟し、わくわくするような観劇との出会いを、今日も発信し続けているのでございます。


東京芸術劇場へのアクセスはこちら

天空のミュージカルシアター Bunkamuraシアターオーブ(東京都渋谷区)

…渋谷駅は本日も、絶賛大工事中でございます。まるで迷路、変貌しすぎてもう無理、等々、期待と困惑の声が交錯していると言ってよろしいでしょう。
計画では2010年から2026年までにJR、東急電鉄、東京地下鉄の3社の交通結節点機能を強化するのが最大の目的とか。
都市の宿命とはいえ、かつての風景が記憶の中へ埋没してゆくのは、やはり哀感を伴うものでございますね…。

ところで、鉄道会社といえば百貨店でございます。渋谷の街は東急電鉄の本拠地ですので、東急百貨店本店がございます。
ややこしいことに駅に直結している東急百貨店は“東横店”で、駅周辺の繁華街から少々離れた高級住宅地・松涛を背後に控えた場所に“本店”がございますので、念のため。
その本店に隣接して、1989年にコンサートホール、美術館、劇場、ミニシアターを備えた東急Bunkamuraという日本初の大型文化施設が登場いたしました。
パリの老舗カフェ・ドゥマゴパリの提携店をテナントに招くなど、なんとも欲張りなオトナの全部のせ。そしてこれがみごとに成功いたしました。
747席の劇場、シアターコクーンは、音響や客席との距離感もたいへん評判よく「コクーン歌舞伎」などでもお馴染みですが、Bunkamuraさんの野望は止まることなく、駅に直結した場所に1,972席の大劇場を創出するなど、果たして想像できたでしょうか。
渋谷駅の大工事が本格化する前の2012年、未来の渋谷駅の姿のトップバッターとして、複合ビル「渋谷ヒカリエ」がオープン。
その11Fから16Fまでを占有し、海外のクラシック・ミュージカル来日公演から話題の最新作まで、幅広いラインナップも魅力的なミュージカルシアター「東急シアターオーブ」が、それでございます。その「渋谷ヒカリエ」が建つ場所は、かつての東急文化会館。
2003年に閉館するまでの47年間、旧渋谷のランドマークにして待ち合わせ場所の定番で、4つの映画館とレストランや店舗、屋上には『五島プラネタリウム』がございました。
今でこそ、全国各地にできたプラネタリウムは多種多様な上に、天才・大平貴之氏によるメガスターZERO・投影恒星数220万個!という素晴らしい装置も出現しております。
しかし、1945年に戦災で喪失して以来、1957年に渋谷の『五島プラネタリウム』が開館するまで、東京にプラネタリウムはただの一つもなかったのでございます。
当時、それこそ天文学的な価格の機材機器が集められ、作家の野尻抱影や、村山定男、高瀬文志郎などの学識者が集結してプログラムが編成された『五島プラネタリウム』は、子どもから大人まで、誰もが憧れ親しんだ知的ロマンあふれる場所。
星座の由来や宇宙の不思議を、宮沢賢治の「銀河鉄道の夜」などを題材に語ってくれたものでした。
しかし、歳月は流れ東急文化会館と運命を共にし、惜しくも消滅いたしました…(終)。いえ、お待ちください。「オーブ」とは球体・宝珠という意味の他に、天体、という意味もございませんでしょうか。
願わくは消滅ではなく、転生なのだと信じたく存じます。


Bunkamuraシアターオーブへのアクセスはこちら

シェイクスピアの劇場 東京グローブ座(東京都新宿区)

1564年に生まれたイギリスの劇作家で詩人のウィリアム・シェイクスピアは、劇場を所有しておりました。
1590年頃のロンドンでは、演劇を愛するエリザベス1世の庇護の元、個性的かつ大規模な公設・私設劇場がいくつも建ち並び、作家が競い合い、役者を奪い合い、しのぎを削っておりました。先頃、劇団四季によるミュージカルにもなりました、1998年公開の映画「恋におちたシェイクスピア」では、その当時の様子がたいへんリアルで興味深く描かれております。


劇中、シェイクスピアが活躍するローズ座やカーテン座のシーンは、セットを組んだのではなく、実在したローズ座のレプリカを精巧に制作して撮影されました。
さ、さすがハリウッド…。観客席は3層で、せり出した舞台を円形に囲み、1F客席は立ち見か藁を敷いて座る土間。
天井は青天井、すなわち野外でございます。舞台を背にした二階部分をバルコニーとして使用し、例えば「ロミオとジュリエット」の有名なバルコニーのシーンなどは、映画そのままに立体的に演出されました。
主演のジョセフ・ファインズのようにイケメンだったかどうかは、残念ながら判じかねますが、エリザベス女王に寵愛され活躍したシェイクスピアは、1599年よりテームズ川の南岸に設立されたグローブ座の共同経営者、兼、座付き作家として、生涯で38本を数える戯曲を残したのでございます。1644年に取り壊された遺構から、現在ではかなり正確にその設計状況が判明しております。
外観は20面の円筒形で、2,000人を超える規模の大劇場。そして1988年、世界に先駆けて忠実に再現したのが、磯崎新設計の「東京グローブ座」なのでございます。
JR大久保駅から西に位置する一角は、旧陸軍が専有していた土地で1980年頃までは公務員住宅がございました。
その国有地再開発の民間導入施策の第一号として、マンション群や公園が整備されたのでございます。
そのコンセプトイメージとして、なぜか“シェイクスピア”が織り込まれ、目玉事業として作られたのが「東京グローブ座」。英国ロイヤル・シェイクスピア・カンパニーをはじめとする、世界中のシェイクスピア劇団を招聘し、当時、シェイクスピア・ブームを巻き起こしました。
その後、2002年に休館し、経営が西戸山開発事業団からジャニーズ事務所へと変遷。2004年のリニューアルオープン以降、さらに魅力的なミュージカル・演劇・コンサートを発信する劇場として、注目を集めております。グローブ座という名称は、「世界はすべて劇場」というラテン語の引用句に由来すると言われます。さすがシェイクスピア、言い得て妙でございます。観劇の際にはぜひ、思い出したいものですね。


東京グローブ座へのアクセスはこちら

初めての舞台観劇でも安心!演劇を10倍楽しむ方法!

  1. 初めての舞台観劇でも安心!演劇を10倍楽しむ方法!
  2. 演劇を10倍楽しむ方法!公演開催をいち早く察知する方法!
  3. 演劇を10倍楽しむ方法!良い席で観劇する方法!
  4. 演劇を10倍楽しむ方法!『劇場』という空間をたのしもう!!!
  5. 演劇を10倍楽しむ方法!舞台『チケット』の入手方法!
  6. 演劇を10倍楽しむ方法!仲間と観劇することで楽しさが増える理由!
  7. 演劇を10倍楽しむ方法!同じ舞台を何度も観劇する理由・・・
  8. 演劇を10倍楽しむ方法!知っておきたい観劇のマナー!
  9. 演劇を10倍楽しむ方法!観劇の際に持っていたら便利なものとは・・・?
  10. 演劇を10倍楽しむ方法!舞台鑑賞当日に劇場で『貰えるもの・買えるもの』は・・・?
  11. 演劇を10倍楽しむ方法!舞台鑑賞後に『アンケート・感想』を書く理由・・・!

コメント

タイトルとURLをコピーしました