ミュージカル『スタミュ』2nd season感想・レポ・レビュー

感想・レビュー

ミュージカル『スタミュ』2nd season マフラーを投げ捨てた瞬間に迎えた、3年越しの雪解け

「スタミュ」とは、2015年10月に第1期が放映されたアニメ作品です。音楽芸能の名門校である綾薙学園を舞台に、学園の花形・ミュージカル学科への入科を目指す1年生たちの物語です。
 主人公は落ちこぼれの“スターダスト”team鳳(チームおおとり)、そしてチームのリーダーである星谷悠太(ほしたに ゆうた/演:杉江大志)。
2017年4月に上演されたミュージカル「スタミュ」(以下、スタミュミュ1)では、team鳳がミュージカル学科に合格するまでの物語が描かれました。そして2018年7月、Second Season(以下、スタミュミュ2)が日本青年館(東京)にて7月4日(水)~11日(水)、および森ノ宮ピロティホール(大阪)にて7月20日(金)~22日(日)に上演されました。


前向きに未来へと踏み出す1年生、過去にとらわれたまま動けないでいる3年生

スタミュ最大の魅力・個性的な3つのチーム

スタミュミュの作品の魅力は、なんといっても個性が違う3つのチームです。

主人公チームであるteam鳳は「わちゃわちゃ」で「キラキラ」。

 とにかく元気な星谷を筆頭に、上がり症の那雪透(なゆき とおる/山中翔太)、歌舞伎役者の天花寺翔(てんげんじ かける/鈴木勝吾)、演劇界のサラブレット・月皇海斗(つきがみ かいと/ランズベリー・アーサー)、クールな苦学生・空閑愁(くが しゅう/新里宏太)の5名が在籍しています。
能天気ポジティブの星谷がリーダーなだけあってとにかく前向き。
スタミュミュ2のために書き下ろされたチーム曲「&BEGINNING
「Re STARTER!
は明るくポップでTHEスタミュという楽曲です。スタミュミュという作品を体現しているチームです。

一方のライバルのteam柊(チームひいらぎ)は「優秀」で「優美」

 team鳳のきらめきがダイヤモンドのように眩しい一方、team柊の輝きにはパールのように繊細で落ち着いた美しさがあります。メンバーは、リーダーの辰己琉唯(たつみ るい/櫻井圭登)、参謀役の申渡栄吾(さわたり えいご/北川尚弥)、天才・戌峰誠士郎(いぬみね せいしろう/丹澤誠二)、チャラ男・虎石和泉(とらいし いずみ/高野洸)小型犬みたいな卯川晶(うがわ あきら/星元裕月)の5人。
華桜会首席の柊先輩が選抜して指導した“スター・オブ・スター”のチームで、全員が実力者です。team鳳はチーム曲であっても5人それぞれに個性的な振付がついていることが多いですが、team柊は5人でぴったりと揃ったダンスを踊るのが特徴。
そんな彼らの「スターライツ・シンフォニー」は穏やかで優しい曲で、team柊のまとまりが感じられる曲です。

最後の華桜会(かおうかい)は「格調高い完成形」

彼らが黒色の燕尾風衣装に身を包んで歌う「SING A SONG! MUSICAL
は1年生チームにはまだない余裕と大人っぽさが感じられます。華麗にそろったダンスを見せながらも、要所要所でジャンプやバットマン(足を高く上げること)を披露し個人としてのスキルの高さも見せつけます。

そもそも華桜会が何かというと、は学園の花形・ミュージカル学科の中でも選び抜かれた優秀な3年生だけで構成される生徒会組織のことです。
 構成メンバーは4
で、首席の柊翼(ひいらぎ つばさ/畠山遼)の他に暁鏡司(あかつき きょうじ/滝澤諒)、楪=クリスチアン=リオン(ゆずりは=クリスチアン=リオン/釣本南)、漣朔也(さざなみ さくや/TAKA)です。そしてteam鳳の指導者・鳳樹(おおとり いつき/丘山晴己)も途中までメンバーでしたが、スタミュミュ1の時点で脱会しています。

 スタミュミュ2は、そんな華桜会にスポットが当てられています。

彼らの間には1年生のときから長く続く確執がありました。
 3年生の現在は「華桜会」となっていますが、1年生のころはteam月皇(チームつきがみ)と呼ばれ、5人揃ってミュージカル学科を目指していました。しかし方向性の違いから鳳が途中で抜け、残った4人でテストステージを突破したという経緯があります。(鳳も別のチームでミュージカル学科に入科しています。)そんな過去から続くわだかまりは3年生の3学期を迎えても消えずにいました。


3年生のわだかまり、1年生の前向きさ。常に対比で表される構図

華桜会と鳳が関係を修復できないでいる間、主人公側の1年生は「卒業セレモニー」の話題で持ちきりです。「卒業セレモニー」とは、1年間華桜会の指導を受けてきた1年生が感謝の気持ちを込めてパフォーマンスを披露する伝統のイベントです。しかし、指導者が華桜会を辞したteam鳳にはセレモニーに出る資格がありません。
星谷たちは、問題児である自分たちを拾い上げ育ててくれた鳳先輩に感謝の気持ちを伝えるため、鳳を華桜会に戻すための作戦を立てはじめます。

 スタミュミュ2には、team鳳がステージの中央で歌い踊る間、華桜会のメンバーが四隅に散らばって見つめるという構図が何度も出てきます。team鳳にはスポットライトが当たりみんな明るい顔をしているのに、華桜会はライトから外れて表情も芳しくない。
 過去にとらわれて動けずにいる3年生・華桜会と未来に向かって前向きな1年生・team鳳。この構図はスタミュミュ2における3年生と1年生の対比そのものです。

「マフラー」と「薔薇」小物で表現した「雪解け」

「マフラー」で和解を鮮やかに表現

 3年生を描く中で印象的だったのが、さりげない小物を使った演出です。
 特にスタミュミュ2におけるキーマン・暁が巻いていた「マフラー
は象徴的でした。
そもそも暁とはスタミュミュ1において最も鳳に反発し、鳳が華桜会を脱会する原因を作った人物です。そう書いてしまうと悪役のようですが、暁には暁の事情があります。1年時に鳳がteam月皇を抜けたことに誰よりも傷ついたのが暁でした。ミュージカル俳優としての才能にあふれた鳳を尊敬していた暁は、鳳を含めたteam月皇のメンバー全員で「卒業セレモニー」に出たかったのです。
だからこそ、暁は卒業セレモニーが近づくにつれて悩みます。
鳳に対するわだかまりはまだ溶けていない。でも、だからといって後輩であるteam鳳に自分と同じ気持ちを味わわせていいのか。
そんな心の揺れ動きが「マフラー」で表現されています。
  華桜会は制服の上に学校指定のキャメルコートという格好で舞台上に何度か登場しますが(7月上演なので混乱しそうですが、物語上は真冬の話です!)、暁だけはその上に赤いマフラーを巻いています。そして鳳を前にするたびにマフラーで口もとを隠すのです。マフラーは暁と鳳の「心の壁」として描かれます。
 そして鳳との和解の場面で、マフラーは最も効果的に使われます。

「君はあの日のステージにいなかったじゃないか」

 暁のそんな一言ではじまる華桜会のチーム曲「フィナーレは僕たちの胸に」の冒頭、暁はマフラーを首から剥いで投げ捨てます。数多く語るより、一瞬で舞台袖に消えていくマフラーは心の壁を取り払う瞬間を鮮やかに表現していました。


さりげない服装の変化で時間軸の変化を表現する「フィナーレは僕たちの胸に」

華桜会の和解を歌う「フィナーレは僕たちの胸に」には、スタミュミュらしいきらびやかな衣装はつきません。見慣れた制服で歌い、踊ります。しかしその服装にこそ強いメッセージが込められています。

楽曲の中で服装に二段階の変化があります。
第一段階は、制服の上にコートを着た姿。
全員が長いコートをはためかせて踊る姿は、華桜会の「今」を表現していました。
普段、彼らは制服の上に燕尾状の上着を着ています。その燕尾服は華桜会のみが着ることを許される、華桜会のメンバーであることの証です。コートはおそらくその燕尾を模しているのでしょう。鳳が華桜会ではない以上全員でその燕尾を着ることはできないので、せめて同じコートをはためかせ、全員の気持ちはひとつだと表現しているように見えました。
第二段階は、そのコートすら途中で脱ぎ捨てたあとに現れる制服のベスト姿。
一見ただの制服ですが、華桜会のメンバーがこの格好をすることには少し特別な意味があります。この格好はスタミュミュ1の回想シーンに出てくる彼らのteam月皇時代と同じなのです。それは、わだかまりの原因になっていた時間に彼らが戻っているということです。
楽曲内で彼らは「あの日のステージで踊っている」と歌い、全員で出ることができなかった「卒業セレモニー」をやり直して和解します。
彼らがコートを脱いだだけで時間が巻き戻ったような感覚に陥る、シンプルで的確な演出です。

最後に彼らはコートの胸ポケットから取り出した一輪の薔薇を、自分のベストの胸に差します。
 諸説あるようですが、薔薇1本の花言葉は「あなたしかいない」、5本集まると「あなたに出会えたことの心からの喜び」という意味になるそうです。
どちらも指導者への感謝の気持ち。5人の和解でようやく指導者である月皇先輩に感謝の気持ちを伝えられた。そういう意味があるように見えました。


華桜会の和解が1年生の未来に繋がる。そんな構成が見事

「フィナーレは僕たちの胸に」の演出は時間の巻き戻しと同時に、未来に向かう時間の経過も描かれているように思いました。
 マフラーやコートで防寒する真冬から、コートを脱ぎ、花が咲く春へ。
 その春とは、「卒業セレモニー」の季節です。
 華桜会が和解して鳳が華桜会に戻った結果、team鳳も「卒業セレモニー」の参加が許されます。
セレモニーのあと、team柊は柊先輩に、team鳳は鳳先輩に花束を渡し感謝の気持ちを伝えます。華桜会がteam月皇としてセレモニーをやり直したからこそteam鳳もセレモニーに参加でき、鳳に感謝を伝えることができた。3年生から1年生に繋がるこの流れは非常に見事でした。
 「卒業セレモニー」をキーワードに2時間45分、非常によくまとまった舞台でした。

ペンネーム:はまち
好きな舞台のジャンル:2.5次元

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