Pカンパニー第23回公演『タイラバヤシかヒラリンかベツヤクミノルかフジョウリか』感想・レポ・レビュー

感想・レビュー

Pカンパニー第23回公演 タイラバヤシかヒラリンかベツヤクミノルかフジョウリか



別役実の最新!混沌・コント・ワールド

街灯がともる、くたびれた電信柱が1本と、くたびれたベンチが1つ。舞台はどこかの街の夕暮れです。男がひとり、丸めたゴザとバスケットを持って現れます。何やら鼻歌まじりでうろつくうちに、電信柱を見上げると「ここだな、やっぱり…。
と、おもむろにゴザを敷き、履物を脱いでちょこんと座ります。そこへ、会社帰りでしょうか。サラリーマン風の男が通りかかります。
「おい。おままごとしないか?」「はい?」…あっという間に、まさかのおじさん二人による“おままごと”が始まり、唖然とする我々観客は、すでにこの二人に釘付けです。
“おままごと”の定義について二人の意見は食い違い、激しくもめているところに、乳母車を押す女が通りかかります。サラリーマンの女房でした。もう半月も家にお金を入れずに妻子を路頭に迷わせているのに、ここで一体何をしているのかと詰め寄ると、なぜかそのまま“おままごと”に参戦。
エプロンを奪って二人に正しい手本を見せはじめますが、出刃包丁を手にすると、その言動がどんどん怪しくなってゆき、サラリーマンは自らの腎臓を売ってお金を作らねばならない成り行きに…。


『タイラバヤシかヒラリンかベツヤクミノルかフジョウリか』感想・レポ・レビュー

本公演は、全14編から成る『別役実の混沌・コント』(三一書房)より、「おままごと」を軸に、「ソロロ・ポリン・テニカ・カバト・オスス・トンブ・ピリン・パリン」「或る晴れた日」「身ノ上話」「狩猟時代」「ブランコ」が散りばめられた、別役実の最新の混沌世界です。別役実のお芝居ではすっかりお馴染みの、舞台上のさりげない電信柱とベンチ。登場人物は名乗ることなく、「おまえ」「あいつ」「あの人」のキャッチボールで、対話が転がりながら話が展開してゆくのも定番です。観客が味わうのは、説明されなくてもそれと判ったはずの状況が、微妙なさじ加減ですり替わり、思ってもみないところに放り投げられるおかしさと、「…いや、あり得るかも」という、うっすらとした恐怖とがせめぎ合うアンビバレンツ。「なぜおかしいのかわからない、けれどおかしいという、まさに混沌とした自らに気付かされるという仕掛けです。
タイトルの“タイラバヤシかヒラリンか”にピンと来たなら、落語に明るい方でしょう。丁稚が「平林」という届け先の読み方が覚えられず、皆に聞いて回るうちにどんどん言葉が変容し、最後には「イチハチジュウノモックモク、ヒトツトヤッツデトッキッキ」になってしまう、という古典落語「平林」からきています。
一度観たら忘れられない、高度すぎる身体能力に笑わされる「ソロロ・ポリン…」は、これをヒントに作られたそうです。
「或る晴れた日」は、ベンチに座った貞淑そうな人妻と、たまたま隣に座った男がとんでもないテーマの会話を繰り広げます。
「身ノ上話」は、男二人によるあらぬ方向へのマウンティング合戦。三人の男が猫をめぐってすれ違う「狩猟時代」に、「ブランコ」は詩的な雰囲気をまとったホラー。
落語と違うのは、どれもオチをキメて笑うタイプではなく、最初から最後までナンセンスに徹していること。そして、これだけ散りばめられても、一向に違和感がないのには、理由があります。実は、全ての話は、死というキーワードで貫かれているのです。しかも、ミステリーのように死を条件設定したときに浮かび上がる生の様相を、観客に「なぜおかしいのかわからないのに、おかしい」と思わせてしまう深い企みが垣間見えるよう。80歳を越えてなお現役の別役実の新作劇を、リアルタイムに観ることができる幸運に、刮目するばかりです。

Pカンパニーについて

Pカンパニーは、別役実作品に縁のある木山事務所出身者を中心に設立されました。
これまでにも第21回公演 『~別役実 男と女の二人芝居3本立て日替公演~』など、別役作品の小品の魅力を紹介してくれています。
構成・演出の林次樹は、今回、冒頭から出演し、一気に観客を引き込む役どころです。
ポップな黄色や淡色を中心にした衣裳に、全員が白い上履き姿、という日常の延長のようでいて非日常な衣裳・美術は、新風を呼びこむテイストで実験的です。
別役作品に登場する俳優には実力と個性が求められますが、今回の公演では、登場人物が最多で13人を数えるなか、息の合ったテンポ感が際立っていました。特に女優陣のキャラが立っていて見応えがあります。


公演データ

2018年6月27日(水)~7月1日(日)
シアターグリーン BOX in BOX THEATER

作:別役 実
構成・演出:林 次樹
美術:松岡 泉
照明:石島奈津子
音響:木内 拓
衣裳:加納豊美

出演
本田次布 林 次樹 一川靖司 宮川知久 磯谷 誠 木村万里 吉岡健二 千葉綾乃
木村愛子 茜部真弓 吉田恵理子 五十嵐弘 山田健太 奥野雅俊 細川美央
立直花子 秋田遙香 亀井奈緒 近藤守

ペンネーム:Ganz Pause
好きな舞台のジャンル:演劇、寄席、ジャズ&ロック
タイムマシンで観に行きたいもの:1900年のパリ万博

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